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双極症と睡眠:概日リズムとその改善策

双極症(双極性障害)は、気分が大きく高まる「躁状態」と、深く落ち込む「うつ状態」を繰り返す病気です。この病気に伴う症状の一つとして、概日リズム(体内時計)の乱れが挙げられます。今回は、双極症と概日リズムの関係について、ご紹介します。

双極症と概日リズムの乱れ

双極症では、睡眠時間が不規則になりやすいのが特徴です。躁状態では睡眠が少なくなり、1日数時間しか寝なくてもエネルギーがあふれるように感じます。逆にうつ状態では、眠りすぎや不眠が起こりやすく、十分に眠ったつもりでも疲れが取れないと感じることがあります。このように、双極症に伴う睡眠の問題は、躁とうつの症状と密接に関係しています。

概日リズムとは?

概日リズムとは、体内でおよそ24時間周期で働く生体リズムのことです。このリズムは、体温、ホルモン分泌、睡眠・覚醒のサイクルなど、私たちの身体のはたらきに大きな影響を与えます。脳の視交叉上核という部分が、光の情報を受け取りながらこのリズムを調整しています。

双極症では、この概日リズムが乱れやすく、夜更かしや不規則な生活パターンが概日リズムの乱れを悪化させる一因となります。概日リズムが乱れると、睡眠の質が低下するだけでなく、気分の安定も難しくなり、躁状態やうつ状態の発作を引き起こすリスクが高まります。

なぜ双極症では概日リズムが乱れやすいのか?

双極症では、概日リズムを調整する脳の働きが通常と異なるため、リズムが乱れやすくなるとされています。特に、夜間におけるメラトニン分泌の低下や、光への過敏な反応が影響すると考えられています。

メラトニンは「睡眠ホルモン」とも呼ばれ、暗くなると脳から分泌されて眠気を促す役割を果たします。しかし、双極症の人はメラトニンの分泌リズムが乱れやすく、夜遅くまで眠れなかったり、朝早く目が覚めたりしやすくなります。

また、双極症では夜間に高まる活動性が見られることがあり、体内時計のリズムを乱す原因となっています。この夜間の覚醒は、躁状態や不安感の増加といった症状と関連しているため、悪循環を引き起こしやすくなります。

概日リズムの改善策

双極症による睡眠リズムの乱れを改善するためには、概日リズムを整える生活習慣の見直しが大切です。以下の改善策を実践することで、双極症の人の睡眠リズムを安定させ、気分の安定にも役立てることができます。

毎日同じ時間に起きる

規則的なリズムを作るためには、特に「起きる時間」を一定に保つことが大切です。たとえ夜更かしをしてしまっても、翌朝は同じ時間に起きるようにしましょう。これにより、体内時計が徐々にリズムを取り戻しやすくなります。

日光を浴びる

朝起きたら、まずは外に出て日光を浴びることで、体内時計がリセットされ、睡眠・覚醒リズムが整いやすくなります。日光は脳に「朝が来た」と伝え、メラトニンの分泌を抑制して目を覚ましやすくします。

日中に外出するのが難しい場合は、室内で光を取り入れられるライトを活用することも効果的です。

就寝前にリラックスする時間を作る

就寝前にリラックスすることで、体と心を睡眠モードに移行しやすくなります。寝る前に光を浴びるような活動(スマホやテレビの使用)を控え、読書や軽いストレッチ、深呼吸などを取り入れると良いでしょう。

夜間に強い光を浴びると、メラトニンの分泌が抑制されてしまうため、夜間の照明は暖色系のライトにすると効果的です。

カフェインやアルコールを控える

カフェインやアルコールは、睡眠の質に悪影響を与えることがあるため、できるだけ控えるようにしましょう。

寝室の環境を整える

快適な寝室環境を整えることも、睡眠リズムの安定に重要です。騒音や光を抑えた静かな環境にすることで、眠りに入りやすくなります。また、寝具も自分に合ったものを選び、体がリラックスできる状態を作りましょう。

専門的な治療を受ける

双極症による睡眠リズムの乱れが改善しない場合は、専門家のサポートを受けることが大切です。医師による薬物療法や、認知行動療法(CBT)などの治療が睡眠リズムの安定に役立つことがあります。特に、概日リズムの調整が必要な場合は、専門的な治療によって早期の改善が期待できます。

概日リズムの改善がもたらす効果

概日リズムを整えることで、双極症の人は睡眠の質が向上し、気分の安定に寄与することが期待されます。さらに、規則正しい生活リズムを保つことで、躁やうつ症状の予防にもつながり、生活全体の質が向上します。

もし、双極症による睡眠の乱れに悩んでいるなら、まずは生活リズムの見直しから始めてみましょう。日々の小さな積み重ねが、体内時計を整え、気分の安定につながります。無理をせず、専門家の支援を受けながら、自分に合った改善策を実践してみてください。

双極症と概日リズムの乱れは、互いに大きく影響し合う要因です。しかし、生活習慣や環境を整えることで、睡眠リズムの改善が見込まれます。少しずつ自分に合った方法を取り入れ、睡眠の質と日々の健康を高めていきましょう。